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2026/08/06 11:43

若い頃に経験した、上司からの「お小言」の話です。

もう何十年も前のこと。

勤めていた職場の上司が、取引先メーカーの営業担当さんと、電話で大至急の注文をしていました。

具体的に何だったかは忘れましたが、電子機器を接続するケーブルだったと思います。
上司は電話を切った後、私に言いました。


「今、ケーブルを数本至急に頼んだが、
少量でもあいつは嫌がらずにこう言ったんだ。

“承知しました。とびきり活きのいいのを送ります”と。

いいか、営業はこれが大事なんだ。
工業製品に活きのいいも悪いもあるもんか。

だけど、一言あえて加えるだけで、こっちの気持ちも動いて嬉しくなるじゃないか。

その一言で、よし、あいつのために頑張ってやろう、と思うんだ。
そうすると、あいつもまたうちのために頑張ってくれる。

そういうのが会社同士の関係、人間関係を円滑にするんだ。
そんな“言葉の力”ってものがあるんだぜ。
覚えておけよ」


だいたい、そんな話だったと思います。

その後に長々と何か言われていたと思うのですが、今となってはもう覚えていません。

私がいたのは小規模な事業所で、本来は技術的な職種でありながら営業も兼ねていました。
営業がいまいちパッとしない私に向けて、ありがたくも耳の痛い激励のお言葉を頂戴したのでした。

その時私は
「ほう、なるほど。面白い話だな。
 “とびきり活きのいい”製品か、今度どこかで使ってみよう」

とだけ思い、その後の上司のお言葉は黙ってスルーしていました。
そんな調子だから、昔も今もパッとしないのかもしれません。
そして残念ながら、その言葉を使う機会はありませんでした。


その後長い年月が過ぎ、

職業も今の通販業に変わりました。
そしてある時、とても印象に残るご注文が入りました。

そのお客様へご連絡が必要となった時、
ふと急に思い出した言葉がありました。
いつか使ってみようと思っていた言葉です。


その言葉を、数十年後に思い出すことになるとは、当時は思いもしませんでした。

「そうだ、ここであの一言を」

その「言葉の力」を信じ、そのお客様に送るメールに一言添えました。
そしてその言葉が、しっかり力を発揮してくれたのです。


後でお客様からは、店の対応が「親切で温かい」とありがたい言葉をいただきました。本当にありがたいことでした。

ささやかな気持ちを託した小さな言葉。
それが大きな力となり、人を励ますことになりました。

そしてその時、昔の上司に言われた「言葉の力」を、私はようやく実感したのでした。
数十年の時を経て、若い頃はただの「お小言」だった言葉が、自分の中で「金言」へと変わった瞬間だったのかもしれません。


昔の上司のイヤと言うほど聞かされた小言のあれこれ、自分が当時の上司と同じ年代になった今、
多くの「金言」があったことを、あらためて気づかされたのでした。